今回ご紹介する作品は
ボロディン作曲の歌劇『イーゴリ公』ではなく、
ティシチェンコ作曲のバレエ『ヤロスラーヴナ・日食』の
マリインスキイ劇場2017年初演版です。
『イーゴリ公』をご覧になった方にはご承知の通り、
タイトルロールの『ヤロスラーヴナ』は
イーゴリ公の妻の名前で、
この歌劇とバレエは『イーゴリ遠征物語』を
共通の素材とした兄弟姉妹のような関係とも言えるでしょう。
『ヤロスラーヴナ』は1974年、旧レニングラートの
マールイ劇場で初めて上演されました。
その時の演出はリュビーモフ、
振付はヴィノグラードフでした。
今回のマリインスキイ劇場での初演は
ストーリーも振付もヴァルナヴァによって
一新され、
ティシチェンコの日本の謡曲を意識した音楽に加えて、
漢字の隷書体を書いた衣装、
キリル文字ともグラゴール文字ともつかない旗など、
ガーリャ・ソロドヴニコワの背景と衣装もどこか東洋的です。
期間限定のようですが、medici.tvで
全幕の視聴が可能です。
指揮/ ゲルギエフ
振付/ ヴァルナヴァ
casts
ヤロスラーヴナ/ ズラータ・ヤリニチ
イーゴリ公/ ユーリイ・スメカロフ
鬼(凶鳥ジフ)/ グリゴーリイ・ポポフ
ポーロヴェツの娘/ クリスティーナ・シャプラン
以下にネタバレを少々。
バレエ『ヤロスラーヴナ』は
同じ素材を使っているとはいえ、
イーゴリの出陣の前にルーシの公達の内紛が表現されたり、
ポーロヴェツによるハニートラップがあったり、
歌劇『イーゴリ公』とはストーリーの細部が異なります。
最大の違いは全幕を通して登場する
「鬼」というキャラクターの存在です。
2幕で翼をつけているので、
『イーゴリ遠征物語』にも登場する
妖怪のジフ鳥でもあるのでしょうが、
役どころはむしろ「死神」のようです。
これは衣装に「鬼」と書いてあるので、
便宜的に「鬼」と呼ぶしかありません。
この「鬼」の画策するままに
イーゴリ軍は壊滅するのですが、
最後に「鬼」を退けるのが
出番の少ないタイトルロールです。
武力を示す巨大な剣や太陽を表す巨大な輪が
効果的に使われています。
イーゴリの遠征については、
チェルニャーコフやモスクワ新劇場の解釈に近いようで、
遠征の失敗と失われた命に対する
イーゴリの責任と罪を大きく扱っています。
このあたりが前世紀の初演版と
違うのではないでしょうか。
最後にマリインカのメイキングをどうぞ。
2017年07月04日
マリインスキイ・バレエ 『ヤロスラーヴナ』
posted by Vindobona at 21:41| Comment(0)
| 雑記
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