2019年にベラルーシのTV局が放送した
ベラルーシ国立ボリショイ・アカデミー歌劇場による
『イーゴリ公』プロローグ及びエピローグ付き全2幕。
アレクサンドル・アニシモフ指揮、
ガリーナ・ガルコフスカヤ演出。
casts
イーゴリ公/ グロモフ
ヤロスラーヴナ/ モスクヴィナ
ヴラヂーミル/ ゴロデツキイ
ガーリチのヴラヂーミル/ ペトロフ
コンチャーク/ アスケロフ
コンチャコーヴナ/ スタセンコ
マリインスキイ、ボリショイ、そしてMETが使用した、
ラムの研究によるボロディンの楽曲の復刻(改訂版)に加え、
METが取り入れたスメルコーフ編曲の『ムラーダ』終曲を使用した
新しい試みがなされた上演です。
バレエの振付はフォーキン版。
●プロローグ
(リムスキイ-コルサコフ版の農民の合唱、『ムラーダ』ドン河氾濫の部分、
プロローグ中盤のイーゴリ公の出陣のアリア以降。短縮された序曲)
●第1幕
(リムスキイ-コルサコフ版の第1幕第1場及び第2場。
リムスキイ-コルサコフ版にはない
ガーリチのヴラヂーミルのアピールなどの楽曲も追加。)
●第2幕
(リムスキイ-コルサコフ版の第2幕の曲順を変更、省略など。
オヴルールは役ごとカットされ、新たにグザークがソロを歌います。
『ムラーダ』冥福の場面)
●エピローグ
(リムスキイ-コルサコフ版の第4幕、ヤロスラーヴナの嘆きで始まり、
グドーク弾きの二人組の場面を一部挟み、
イーゴリ公とヤロスラーヴナとの二重唱、
ラムの改訂によるイーゴリ公のモノローグ、
リムスキイ-コルサコフ版のプロローグの最後の合唱で終了。)
METの衝撃的な改訂版演出による上演以降、
最もMETで使用したものに近い楽曲で構成された演出です。
MET版を大変意識した作品となっており、MET版同様、
初演版でいつの間にかいなくなるガーリチ公の殺害が
1幕最後で示唆されます。
ベラルーシ・ボリショイ版の独自の要素としては、
イーゴリ公の逃亡を手引きするオヴルールが登場しない、
黙役のグザークがソロを歌うなどが挙げられます。
エピローグでは諸公の前でイーゴリ公がモノローグを歌い、
最後にリムスキイ-コルサコフ版のプロローグの合唱が歌われます。
ベラルーシ・ボリショイ版では
イーゴリ公は祖国の英雄として演出されています。
これが懊悩し、戦いも権力も放棄したMET版のイーゴリ公に対する
ベラルーシ・ボリショイの回答なのでしょう。
個人的な感想になりますが、
最近の傾向として、リムスキイ-コルサコフが作曲した部分を
省略するのは方針としてわかりやすいのですが、
新しく編曲した楽曲を増補する一方で、
ボロディンのオリジナル曲まで削除するのは何故なのか、
少々、首をひねります。
【歌劇『イーゴリ公』動画紹介の最新記事】